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漢字混じりの童話ひとりでよめるひらがなのどうわ
お母さんの海涼んでいたカラスヘビがけの上の花畑はり山の花黒いとうの上まほうの夜

はり山の花

マーちゃんがとってもふしぎそうに見ているのは、げんかんにかざってある花です。花は、ケンザンという、ハリの山のようなものに刺してあります。ケンザンは、花がたおれないように、花のくきをさして、動かないようにする道具です。

げんかんの花は今日もきれいだけれど、花はいたくないのかな。だって、針の山にさされているんだもの。ぼくだったら血がたくさん出ていたいのに、花は血が出ないのかな。花をじっと見つめたまま、マーちゃんはお母さんに聞きました。

「ねえ、お母さん。花はいたくないのかしら。ぼくだったら痛くて泣いちゃうよ。花は、ハリが痛くないのかな。」

お母さんはちょっと困っていましたが、
「そうねぇ、きっと痛くないのよ。いたくないように水をあげたから。」と言いました。
「水をあげるといたくないの?ぼくも痛くないかしら。」

マーちゃんは、そっと針の山に指先でさわりました。そしたら、チクッと針がささって、思わずさけびました。
「いたいっ!ねぇ、お母さん。ぼくはやっぱり痛いよ。だからきっと花も痛いよ。取ってあげないとかわいそうだよ。」

お母さんはにっこりして言いました。
「マーちゃんはやさしいね。マーちゃんは痛いからね。でもね、これは花でしょう。人間じゃないよ。」
「花は痛くないの?」
「痛いって言わないでしょう。それに、もう切ってしまって、根っこがないから、ちゃんと立てないでしょう。それに水がないと、やっぱりかれてしまうのよ。こうすると、何日かは、きれいなまま長持ちするからね。だから、針の山にさして、水をあげてるの。人間は痛くて血が出てしまうけれど、花は元気でしょう。ここにあるつぼみだって、明日になったらさくかもしれないよ。」

「ほんと、お母さん。このつぼみがさくの?さいて花になるの?もじゃもじゃの根っこがないのに?」
マーちゃんは目を丸くしています。

その日の夜は、明日になったらつぼみが開いているかしら、と、そればかり考えて、いつものお休みの時間にも、ねむるどころではありませんでした。
それでも、一日中、いっぱい遊んでいたのでやっぱり眠くなりました。数を十まで数えられるようになっているマーちゃんは、羊を十ぴき、また十ぴき、くり返し数えているうちに、ぐっすり眠ったのです。

朝になりました。お母さんがマーちゃんを起こして、着がえさせています。

マーちゃんは、早くげんかんの花がさいたかどうか、確かめたくてたまりません。着がえると、急いでげんかんに行きました。そして、きのうのつぼみを探すと、つぼみがほんの少しふくらんでいます。マーちゃんは大喜びです。

「お母さん、花がさくよ。きのうはつぼみだったのに、少し大きくなっているよ。」
「そう、良かったね。花が元気でさいてくれるように、水をかえて、気持ち良くしてあげましょうね。」

お母さんは、そう言って、花びんを洗面所に持って行きました。ケンザンを持ち上げて横に置くと、水をたくさん入れました。そうしてげんかんにもどると、花をさっきと同じようにかざりました。

花ってすごいなあ。根っこがなくても死なないで、ちゃんと花がさくのだもの。
でも、ぼくやほかのみんなみたいに、人間はやっぱり血が出て痛いよね。ぼくなんか、針の山にちょっとさわっただけで、血が出て痛かったもの。でも、花だって、話ができたら、きっと痛いって言うよ。花は、いたくても痛いって言えなくて、かわいそうだな。

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