まだ封建色の強い大正時代に、《足入婚》で妻を離縁した佐吉。その娘、佳菜は乳飲み子のときに母親から離され、妻を失った悲しみから放蕩に走る父親と、祖母ツネに育てられます。
そして、尋常高等小学校を卒業してすぐに関西の織物工場に行かされます。しかし、佳菜を可愛がってくれていた従兄の武志が佳菜を助け出します。武志は、佳菜を和裁学校に入れ、和裁の教授の免状を取るように言います。数年後、佳菜は免状を手にし、迎えに来た武志とともに、淡い期待を抱いて故郷に戻ります。
そして、その数ヵ月後、武志に召集令状が届き、武志は佳菜と結婚した後、出征していきます。その後、佳菜は妊娠に気づきますが、武志は戦死してしまいます。
悲しみながらも、武志の子を産もうとする佳菜。誰もいない日を選んだように産気づく佳菜。赤ん坊の息が止まるのを見つめたまま気を失ってしまう佳菜。
その佳菜と佳菜の周囲の人物を描いていきます。
とりあえず今、日本が《神風に守られた国》として軍隊に支配されていないのは、この上なく有り難いことです。しかし、どんな政治形態であれ、極端に狭い枠にはめ込まれた社会では、極一部の人間しか幸福になれません。
《お詫び》第二次世界大戦に関し、知れば知るほど、教えられた歴史が史実ではないと思えますので、歪曲の記述を削除しました。(「空襲警報」の一部)[ 2010.01.06.更新] |
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佳菜 | 主人公 佐吉の一人娘。 |
武志 | 佳菜の従兄(いとこ)。 佳菜が幼い頃から可愛がっており、佳菜の一番目の夫。 |
佐吉 | 佳菜の父 旧家の家長。母のツネに、好いた妻との仲を裂かれ放蕩に走る。 |
正夫 | 佳菜の二番目の夫。 |
真沙子 | 佳菜と正夫の長女。 |
美沙子 | 佳菜と正夫の次女。 |
沙智子 | 佳菜と正夫の三女。 |
正也 | 佳菜と正夫の長男。 |
ナミ | 佳菜の実母 生き別れたまま、会えないでいる。 |
ツネ | 佐吉の母 故人。家の存続に執着する余り、佐吉とナミを引き裂いた。 |
タミ | 佳菜の継母 佳菜が幼い頃に、佐吉の後妻になるが、1年もたずに実家に戻っている。 |
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