大人にも子供にもしばしば見られる、人と人との意識の違い。人を非難中傷しても、中傷した自覚がないから、被害妄想だと決めつける。だから内省するということがない。『人』は、それも差別の一つだということに気づかなければいけない。言動が救いの手となり、『Let's go!　さあ、行こう！』というのでなければ、自分がいじめ、いびり、差別したことになるのだと気づかなければいけない。

端から見るとあからさまな非難中傷も、当人や当人を擁護する周囲の人々から見れば単なる小言にしか見えない。親しい人を好ましく思うあまりに目が曇っていることには気づかない。『人』は、それが人の平等の枠から外れてコンプレックスを植えつけるだけだということに、道を示さず萎縮させているだけだということに、救いがなく罵倒にすぎないことに、それも差別の一つだということに、気づかなければいけない。

無為に人を非難する前になすべきことは、相手にとって無理無体な要求を押しつけていないかを把握すること。自分には絶対できないようなことを当然のように押しつけてはいないか。自分ができるからといって、人のあらゆる事情を無視してできるのが当然だとし、できないことを軽蔑してはいないか。人に神業や奇跡の類まで要求していないか。

言われた人が萎縮してしまうような言動は行き過ぎであり、非難中傷して差別していることになる。非難した当人にそのつもりがないからというのは言い訳にすぎない。無理という権利もない。言われた人が押しつけられた無理無体な要求や苦痛とは、比較にもなりはしないのだから。

叱責は本来、目上にある者が目下の者の落ち度を指摘して正しい方向に導くためにある。その本来の姿をなさない導きのない叱責、救いのない非難は、萎縮させる度合いが強いほど、まさしくイジメ・イビリなど諸々の差別になっていく。

親しかろうと、親しくなかろうと、どういう間柄であれ、己以外の過ちをただ罵倒するというのは、成りゆきや思いつきがどうあろうと、すべきではない。その指摘や非難には救いがないことを承知していながら、それでもするのなら、悪意を抱いていることを認め、その責を負うことをも承知しなければならない。

これらを日々心に留めて人生を歩むことができるなら、無為に人を貶めることはない。失言で人の人生を奈落に突き落とすこともない。日々自分を顧みて、『人』として精進しようとする心を持つなら、人を差別するなどできようはずはない。

庶民だから、人間だもの、完璧なわけないじゃない。それでも、社会を成す一人である以上、決して、その心が堕落していても良いわけではない。また、敢えて精進する心のない人の身近にいるなら、危険を承知していなければならない。

心を病む人の身近には、その障害となる人がいる、という。一人が良くなれば誰かが悪くなる、ともいう。ナゾナゾのような言葉だけれど、大切な人を、人生の危機を感じるような人や、人の輪から、救いだすことをためらうべきではない。心が壊されるより怖いことなど、生きているうちにはないのだから。こわされる前なら気力が残っているのだから、癒されるのもずっと早い。