人も世も、荒れて荒んで、行けども、行けども、希望に見えたものの真の姿に絶望する。勝ち組とか負け組とか、そんなもので人の評価をする。己も、人も、その心を人の道に照らし合わせて恥じないなら、何で卑しむべきか、卑しまれるべきか。社会の発展という大義名分の陰で、人を誣いて、欺いて、善を振り捨て、力ずくで勝ち取ったものが、何で輝かしいものか。

イジメの被害者が、未来への希望もなく、長い月日を、来る日も来る日も、ただただ生き、絶望することに疲れ、死に場所を求めて？生きられる場所を求めて？さ迷いだす。何も悪いことをしていないのに、普通に、生きたいだけなのに、何でこんなにイジメられるのか。何で引き篭もるまでイジメられるのか。何で引き篭もっていてもイジメられるのか。一体、何年経ったら普通に生きられるんだ、と･･･。長い、誰の手も差し伸べられない年月は、目の前の絶望を生涯にわたる絶望へと変える。その苦悶が、自分を誣いた者だけでなく、日なたで生きる者全てが、知らぬ振りをしている、イジメっ子が自分を苦しめるのに手を貸している、と、憎しみを抱かせる。

なぜなら、大人のイジメも子供のイジメと次元が変わらないから。人は、己の自尊心を安心させる手っ取り早い方法は他人を卑下することだと知っている。だから、イビリや差別をやめられない。そんなことをしていたら国の発展を妨げるという危機感すら歯止めにならない。そんな社会で、大人たちが安易に加担し、地域ぐるみのイジメになるのは必然でもある。それを身をもって知ったからこそ、イジメられっ子は引き篭もって身を守る。これが被害妄想といえるか。

子供らしい楽しさも、大人への階段を上がる機会も、全てを奪われたままに、引き篭もる。人を含め、動物は生あるかぎり本能的に動くようにできている。それができない辛さは想像を絶する。それが、常軌を逸して、長年の積もり積もった恨みとなり、憎しみに変わる。引き篭もりの原因が、ブレーキをかけるだけの理性が育まれる前にあるなら、正常なブレーキが育まれるはずもない。それは無差別殺人に走る原因にならないだろうか。

上に立つ者たちが人を使い捨てにすれば、それを見て育つ子供はそれを良しとして育つ。そうして育った大人たちは、己が子に、それを良しと説き育てる。異を唱える者を社会から締め出す。いつの時代も変わらない、私腹を肥やす姿が、不正を犯す姿が、金と権力に群がる姿が、イジメの元凶にある。全ては上に立つ者たちの言動や行動に由来する。

責任は誰にある？引き篭もることでしか身を守れない子供たちか？育まれるべき環境から締め出し、人の営みと無縁の世界に追いやった者たちではないのか。それを、彼らが責任を取れる年齢になったから、責任は本人が取るべきだというのか？それをおかしいと思わないことこそ問題だ。世は親の責任を問うが、親の声は無視する。身体が大きく育っていても、ケアもなく罵られてきた心は、今も怯える子供のままに、全く癒されてはいない。これを無責任といわずに何という。

引き篭もる以外に身を守りようがない子供たち。手を差し伸べもせず叱咤するだけの大人たち。高みから批判するのはいともたやすい。やることなすこと、何から何まで文句をつければいい。しかし、己自身に対しては、弁護はしても、批判ができるか？成人し社会に暮らす人に、イジメもせず、傍観もせず、社会生活を営んでいる人が、一体、どれほどいるか。胸に手を当てる程度ではなく、人の道に、人倫に照らし合わせて恥じない人がいるか。仕方がなかったとか、どうしようもなかったなどの言い訳は、絶望した人間には何の救いにもならない。

自殺するか、心が壊れるまで続くイジメさえなければ、始まりの無差別攻撃さえなければ、引き篭もってまで身を守る必要なんか、なかった。世界にテロは絶えないが、身近のテロもどきも絶えない。今の時代に、自ら口にするものに不足せず、善の心に満たされて生を終えることができるなら、それは無上の幸せに他ならない。