日本人は返上する時にきている。何を？世界に名だたる『蓋をする民族』というレッテルを。

『身も蓋もない』という諺があるほど、何かにつけ秘密にしたがり、隠したがるのが人ではあるが。隠してよいものと悪いものを区別して隠すくらいの節操を持ちたい。何にでも蓋をするのは、その程度の節操しか持たない、と、自ら墓穴を掘るに等しい。それでは、端で見る者は尊敬の念の抱きようがない。

蓋をするという行為は、誰かが見ていても何もなかったことにすることであり、引いては社会の歪みの増大を助長することでもある。一瞬の夢ではなく、永く人の上に立ちたい、世界のリーダーになりたい、と願いながら、砂上に楼閣を築いて何になろうか。

やってしまったことを悔やんでもしかたがない。体裁を繕うしかない。その挙句に辞めておしまいにする。しかし、潔さというのは辞めるから潔いのではなく、己の非を認めることがプライドの高い人間にとってどれほど苦痛であるかを慮って潔いとされる。ただ辞めて潔いというのでは、決して、ない。

ついでに言えば、ただの悪あがきといえるかもしれない。そのうえ、人生は一瞬の幻だったと独りごちて、過分な余生を送るに至っては、卑劣という他ない。

責を果たす能力なしとして辞めるのは当然にしても、辞めたから非を償わないというのでは、逃げる犯罪者と変わらない。蓋をするのに血眼になるプライドがあるのに、名誉のかかったプライドの回復に血眼にならないのは本末転倒というものだろう。そんなものはプライドとはいわない。

それをあくまでしないのは、正しいプライドが欠落しているからに他ならない。子供の顕示欲と一緒にされれば腹は立とうが、どう取り繕おうと、そのレベルでしかない。力もないのに力を揮おうとすれば挫折（我慢）か不正（ごね得）しかないというのは、誰でもが、子供の時代に否応なく学んでしまうものなのだから。