三権分立。国家における独裁を防ぐために、司法・立法・行政の三つに権力を分散させた理想的なものであると、ン十年前、平和憲法の名の下に、民主主義の崇高さを象徴するものとして、徹底的に教えこまれた。試験にも散々出た。

しかし、それを目指してはいても、実際の国政はそれと似て非なるものだとは教えられなかった。国民の誰もが一丸となってそれを目指していると信じていた。政治家とは、こうも平然と白を黒と言える人種なのか。まあ、世界中でも、似たり寄ったりの話題に事欠かないようではあるが。

今の多くの庶民は、ただ食べるために仕事を探している。大学を出ても職がない。高卒や中卒ならなおない。仕事がないから健康保険税が払えない。家族も、払ってやろうにも払ってやれる所得がない。しかし、役所はお構いなしになけなしの財産の差し押さえ通知を送りつける。暮らせるだけの仕事があれば、誰しも払わないことはないのに。封建時代とどこが違うというのか。

そんな中で、共産党の機関紙によれば、（管理人の住む市では共産党が印刷や手書きの機関紙を発行しており、時々ポストに入っている）市の高額所得者である某議員が、国の援助を受ける某団体から『役員手当』なるものを、十年前から毎月10万円も受け取っているというではないか。告発者は２０万と言ったが、共産党議員が某議員に問い合わせると、当人は「いいえ、１０万ですよ」と言ったという。受け取りを認めたわけだが、その合計は実に一千万円を越える。

昨今の行政の有様で議員報酬分の仕事をこなせていると言えるだろうか。それを、労働者の一か月分の賃金にも相当するほどの余禄を《役員手当》として受け取るとは。福祉予算をどんどん削るよりも、議員報酬の上積みを削るべきではないのか。議員数実に十数人、他の議員がそれを知らないはずはないと思えるのに、そこを突くのは共産党議員だけで、他の政党の議員は何をしているのかと首を捻りたくなる。《過ちを改むるにはばかることなかれ》の例えではないが、右へならえ、ではないなら、正義感を大いに発揮して市政を正すべきだろう。日本人が愛してやまない誠実さというのはそういうことを指すのではないのか。

議員の役職にしても、重要な行政であればこそなお、当然ながら手分けしないとこなせるはずもなく、色々と役職を分けざるを得ない。それを、数名の議員が役職を独占し、トップ当選の議員を役職から弾き出しているのはいかにも愚かしく見苦しい。子供でも生徒会役員を独り占めすることは考えもしない。してもこなせないことは考えればわかるのだから。

議員報酬は議員としてのあらゆる活動の報酬として高額に設定されている。その活動をするのは当り前で、他に報酬を受け取るのが不正でないとする法律のほうがおかしい。それを作ったのは他ならぬ議員なのだから、都合のいい法を作ったのだろうが。そんな風に法を作れるような政治形態は社会を貶めるだけで何の益もない。三権分立など影も形もない。三権分立が、追いやられた雲の彼方で「お〜い！早くしないと社会が崩壊するぞ〜！本当だぞ〜！！」と声を限りに叫んでいるような気がする。

昔は、何と良い時代に生まれたものだろうと思ったものだが、そんな良い時代を日本人は捨ててしまった。