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軍備や防衛の増強の話題でよく出るのが徴兵制の必要性。『今の若者はなってない』『規律の習得や心身の鍛錬に軍隊の規律が必要』などなど。しかし、それは安易に過ぎないか。
軍隊は『普通』とは言えない。人に兵器を向けるのが軍隊であり、『普通』は人に兵器を向ければ犯罪になる。軍隊は救援活動もするが、本来は殺人団体なのだから、その存在自体が人権無視になる。それは極限の選択として、大切なものを守るために、やむなく選択されるべきものだ。人は十人十色。良心との闘いの末に、敢えて守るために銃を取る人もいる。取らない人もいる。取れない人もいる。
昔は有無を言わさず徴兵された。そのジレンマのはけ口が、二等兵イジメのシゴキやリンチになった。それが嫌で逃げれば脱走兵として処分された。病気などで兵役を免除される者もいたが、『できそこない』として非国民呼ばわりされた。身内を戦地に送り出した辛さで、戦死を免れた者を非難しないではいられなかったのだろう。それが徴兵制の現実だ。
今、学校の体育クラブや団体などの、軍隊もどきの上下関係が取り沙汰されている。そんな時に徴兵制を布けば、イジメや体罰の格好の隠れ蓑になる。軍隊の二等兵に類するような経験をしたなら、徴兵制を支持するなど、できはしない。
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暴力的な人が衝動を抑えられれば、本人は社会生活が楽に送れるようになり、社会の保安にもなる。それはそうだが、人には、生来優しい人や、暴力を振るえない人、宗教で禁じられている人、虚弱体質の人、慢性疾患を抱えている人、体力のない人、運動の苦手な人、など、暴力的な日々や異常な規律に耐えられない人は多い。アメリカでは戦地からの帰還兵の社会復帰が問題になってさえいる。
人には得手不得手、向き不向きがある。身体で覚えるのが得意な人もいれば、頭で覚えるのが得意な人もいる。痛みに強い人もいれば、耐え切れずに錯乱したり、ショック死する人もいる。男性の体は力を使うのに向いているが、女性の体は、そもそも、そんな力を持てないようにできている。そこに一律の試練を課すなら男性しか生き残れない。
不安と恐怖だけでは人は生きられない。人の赤ん坊は笑いかけないと死んでしまう。『もっと』厳しくするなら、『もっともっと』自殺者が出る。『世を正せば藪蛇になる』『己を正せば損をする』と思う輩は、代わりに人を非難中傷し、それらが持つ権威に世論が迎合する。『もっと』はあくまで他人事だから言える。
力に救われることは始まりでも、それだけでは心は癒されない。軍人やマッチョは聖人だ、と言えば、間違いなく誰もが呆れる。そう、厳しいほど根性や規範が身につく、とは言えない。他人の足を引っ張りあいながら『今の若者は…』と嘆いても始まらない。世の不正をトコトン正すなら、自ずと道は開ける。衣食足りて礼節を知る。安泰が一番。ほんの一握り以外は清く正しい社会で生きたいのだから。
[ 2007.12.8 ]
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 衣食足りて礼節を知るというが、衣食足りても礼節を知らない者には再教育しかない。それには軍隊がいいと言う人が多い。どうしてそう言える？自分を律することが、どうやったら殺人が一番の仕事の軍隊で学べると思うのか理解に苦しむ。（軍隊ではないと言う人もいるだろうが、近頃の海外活動など、諸外国から見ればれっきとした軍隊だ。）
人間性を無視する環境で正しい人間性は学べない。論より証拠に、荒んだ社会の中で、人はなお荒み続けているではないか。それを、どうやったら、より酷い環境に押し込めば解決できると思えるのか、それが理解できない。かえって残っている良心が根こそぎになりそうだ。
軍隊がそれほど素晴らしいなら、軍国主義は最高の政治形態のはず。今の世界にしても、日本にしても、軍国主義は良い結果をもたらしていない。軍隊を神聖視するような思考は軍国主義者を思わせる。男性は戦うことがお好みかもしれないが、どんな理由があろうと、武器に振り回されないだけの精神力がない人に武器を持たせてはいけない。[ 2008.6.18.]
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