自転車は人がジャマだという。バイクは人と自転車がジャマだという。車は人と自転車とバイクがジャマだという。そして、邪魔者の安全を確認もせずに無視して、我先にと邪魔者を追い抜いて前に行きたがる。自転車は人と、時にはバイクや車を。バイクは人と自転車と、時には車を。車は、人と自転車とバイク（特に原付バイク）を。

しかも、二輪道が無い道路が多い。あっても、右左折のための道幅が足りないのか、おざなりなのか、交叉点付近の二輪道が先細りになっていて、自転車やバイクのための停車スペースなど全くないことが多い。

原付バイクは車道の路肩を走る。自転車も、歩道か車道の路肩を走る。しかし、路肩は砂が寄り集まり、舗装もいいかげん。歩道には、必須とでも言いたげに、前カゴなどから荷物が飛び出すほどの段差がついている。自転車をリハビリとして乗る人も多く、腰椎を傷めた人などには艱難辛苦としか言いようがない。

したがって、自転車は車道の端を走る。バイクも車道に入りこみ、車の流れに身を投じる。車はそんなことにはおかまいなしに、邪魔者扱いする。そのくせ、ミニバイクの事故は双方のエンジンがかかっているかぎり双方のミスと言われ、運転者が男性であれば、傲慢でも怠惰でも老人でも、女性というだけで《より未熟》とされる。

急な危険を回避する察知能力とハンドル操作は、運転能力に不可欠で、必要を感じたことのない運転者はいないだろう。にもかかわらず、自分の周りは安全で、誰もふいに近寄ったりせず、進路を妨げることもないと、信じているかのようだ。自転車のマナーも右に同じで、嘆くべきは、人の交通モラルが低いことに他ならない。必死で運転する者の品位まで道連れにされるのはたまらない。

見も知らぬ他人の命を奪うのは、人としての常識があればできないが、これが見知らぬ人に発揮されることはほとんどない。他人の足を取ることばかりが優先され、自分と身内の世間体や名声が無条件に優先される。自分や身内にとって都合が良ければ、他人の未来を台無しにしても省みない。道徳は、相手の名声や権力が同程度以上だと重要視されるが、そうでなければ殆どの場合で無視される。

原付バイクは道路社会の「中間管理職」といえる。「平」である人にとっては脅威でも、「高級管理職」である車にとっては取るに足らない車道の路肩の住人でしかない。車道を走れば、路肩から入り込む不貞の輩にすぎない。ついでに、「平」である人の領域である歩道も、当然のように占拠される。人の、道徳ではなく権力偏重の発想がここにある。

渋滞と傲慢に満ちた狭い日本の道路社会で、気軽に乗れるが、通行帯が整備されていない自転車や原付バイクは身の危険に晒されている。自転車や原付バイクの乗車モラルは当然だが、何より車の運転者の性格適性と運転能力を重視し、場合によっては更新させないことだろう。ウインカーを出さない、自分が曲がる方向の安全確認もしない、自分以外は邪魔者だと思うような人間には、免許の交付も再交付も絶対にすべきではない。

違反もそれを念頭において取り締まれば自然に良いモラルを持つ運転者が残っていくのではないか。この狭い国土で、猫にも杓子にもと運転免許を持たせるべきではないだろう。