このところ、やっと認められてきた嫌煙権。吸っている人よりも、周りにいる人の方が、非常に健康に悪い影響があるというのは、最近では誰もが知っている。それでも、タバコの煙からはなかなか逃れられない。

好きだから、ニコチン中毒だから、落ちつくから、という個人的な理由はあるだろう。しかし、落ちつくように思えるのは、血の巡りが悪くなって体の隅々まで血液が行き渡らなくなり、思考能力が落ちているのではないか。体に良くないとわかっていながら続けてしまうのは、酒と同じでまさに中毒なのだろう。それでも、人前でタバコを吸うのは、人体への悪影響を無視して、他人の命を軽視していることになる、それこそが重要だ。

妊娠した女性や子供のそばでタバコを吸わないのは、当然のエチケットになりつつあるが、まだまだ、やめてほしいと言える雰囲気にはなっていない。身近な恐怖として、もし、幼児が食べたりしたら、食べた量によっては、死んでしまう。ニコチンには、それくらいの毒性がある。それがわかっているのに、なぜ、タバコが販売禁止にならないのか不思議でしかたがない。そんなものを、よく平気で口にできるものだと常々思っているが、理性的な反論など期待できそうにないので口にできないでいる。

しかし、タバコを嫌う他人まで巻き込まないでほしいという気持ちは日々大きくなる。体に良くないことをするのなら、自分だけでやってくれ、と言いたい。誰だ！タバコなど作ったのは！！と思うときもある。体に悪いことをしたがるのが人間なのだろうか。

とはいうものの、最近はタバコを吸える場所が少なくなって、精神的に落ちつかないと耳にしたことがある。思考力を鈍らせることでしかストレスを逃れられないというのは、少々気の毒ではある。しかし、タバコを吸わずに生きている人も、当然ながら多くいる。禁煙をする人たちは、他人の健康を危険にさらすよりも、禁煙できない理由を並べるよりも、その人たちのストレス解消法を学ぶべきだろう。

体質で脂肪の代謝が悪く、生まれつき太っている人が、痩せるのを強制されるのに比べれば、ずっと楽なはずだ。生まれつき脂肪過多の人はいるが、生まれつきタバコを手放せない人はいない。痩せの大食いタイプに出会うと睨みつけたくなるのと同じに、タバコをやめない人も睨みつけたくなる。

それに、肥満は本人に悪影響があるだけだが、タバコは周りへの悪影響のほうが恐ろしく大きい。この差は決定的ではないか。意志の問題だとか、中毒だから、習慣だから、で吸い続けようとするのは、身勝手というべきだろう。これで儲ける国も国だが。

「酒もタバコもやらない？そんな堅いことではいかん！」では、酒やタバコをやれば堅くないというのか。酒は虎にさえならなければ他人に大した害は出ないが、タバコは百害あって一利無し。他人に迷惑をかけないで生きるのは、なかなかできることではないのだから。《人は持ちつ持たれつ》と言うが、他人に迷惑をかけないで生きられるなら、堅かろうが軟らかかろうが、最高ではないか。