人は、他人に対しては常に賢者よろしくその不甲斐なさをあげつらい非難する。が、その多くが己にその目を向ける目を持たず、己の意見を押し通すことを世の何よりも重要とする。己の主張が不条理であればあるほど、ますます激しく、勢いで押し切ろうとする。それが権力者であれば、それを利用して世論を左右することを憚らない向きすらある。

人は、良きも悪きも記録に残す。その歴史は何のために記録されているのか。せっかく記録されたものを、役に立てようとは思わないのか。歴史を振り返り、反省し、その愚かさを未来でくり返すまいとして記録するのではないのか。一体、どれだけ愚考をくり返せば気がすむのか。もしかして、物語りよろしく面白おかしく、時には脚色すらして記録しているにすぎないのか。

異民族を卑下する。他国民を卑下する。肌の色で卑下する。宗教で差別する。武器を持たない他国民・他民族・他教あるいは他宗派の信者に対して、発砲・殺戮・暴行など、罪を犯しても無視する。それこそ、紛うことなきナチズムではないか。

法治社会に不正が闊歩するのは？一部の繁栄のために故意に格差を広げるのは？底辺層に際限なく課税するのは？私腹は貯め放題、他国には湯水のように援助できるのに、国民の福祉が絵に描いた餅なのは？大事の前の小事かのような建前論で他人に死を突きつけるのは、それはナチズムではないのか？

己や仲間の欲のために人を陥れるのは？イジメを人が死ぬまで隠そうとするのは？人の訴えを頭から無視するのは？それらが富や権力により預かるためであるのは？それもまたナチズムではないのか。

陪審員制度にしても、制度自体はすばらしくとも、管理教育と重税で国民の多数の希望を奪い、倫理観を低下させておいて、そのうえで導入するのは妥当だろうか。国民を殺し合わせたいのか。社会的に抹殺するという意味合いでだが。暴力的な社会では、富も力もない弱い者から順に淘汰される。そんな社会では、どれほど武力を使おうが、己の富と権力もいずれは淘汰される時が来るとは思わないのだろうか。まさか、実は、増えすぎた人口を減らすのに己の手を汚さずにすむから、頃合を見てやめさせれば良いとでもいうのか？

また、学校教育で行われている相互監視は封建時代の権力者の常套手段であり、人の協調を崩し、警戒心を煽り、狂気へと駆り立てる。実に、嫌悪すべき江戸時代の管理制度そのままではないか。その場で有無を言わさず切り殺されるよりも、熱い鉄板の上を転がるような苦しみの中で死ぬことを強いられるほうがましだろうか？権力者たちの私利私欲のために人倫教育を意図的に撤廃して荒んだ社会にする、その意義はどこにあるのか。たとえ権力の前には無力であろうとも、人生はその本人のものであり、他の誰の玩具でもない。人倫を尊び行い教えずに、なぜ教育か。民主的な国造りとは、民全体のためというのが前提にある。しかし、現状は一部権力者による専制のための国造りとしか見えない。

このように不安な社会では、人は、心の安定のために、ただただ何かに縋りたくなり、怪しげな新興宗教に入信してしまう。選ぶだけの理性が働かなくなった丁度その時に、優しい声を掛けてくる宗教に。まさに狂気の選択をする。そこで洗脳されてしまえば本来の人格は破壊されてしまう。そして、手前勝手の理論・ナチズムを神がかりさせて正当化し、鬱積した鬱憤を晴らしてニュースを賑わせることになる。

世界中に、己を律し、他者に害しない宗教がどれほどあるだろうか。本来、宗教とは人の心の安らぎのためにある平和的なものであり、妄信や暴力的な排他が目的のものではない。それらの観点から偏見のない目で見れば身近にないこともない。無神論者が何おかいわんやで、本人は入信どころか神の存在を信じられないでいるのだが。しかし、何事であれ、どうせ選択するなら、何かに縋らないと自我を保てそうにないなら、自分が人倫とともに生きられる選択をしたいものだ。