良く言えば、五分五分の公正な取引をさすが、一般的に見返りを意味することが多い。悪くすれば、やった分は取り返すという意味があり、ビジネスの場にこそふさわしい。ビジネスの場ではギブアンドテイクには大きな意味がある。

しかし、最近は派遣や業務代行の会社が異常に増えている。それらの企業同士のギブアンドテイクは、上手くいっているのだろうか。立場が不安定な労働者が『クライアント』企業で働く場合、企業が払った分を取り戻そうとして過酷な要求をしても、はね返せないない場合が多い。当然、病気やケガ、労働拒否などの契約不履行が増えていく。

また、派遣会社や代行会社で代行する場合は、一般に、あからさまなミスや間違いも『クライアント』が指示しただけの処理しかしない。その場でできて当然の業務改善もしないのでは、修正と確認に手間どり迅速な対応はできない。オールオアナッシングの精神が妙な形で変に徹底されている。

これらを嫌う『クライアント』は業者を変えるか、指示をファジーにするか事細かく指示することになる。業者を選べば高くつき、指示をファジーにすれば、指示したことしかしないのでは業務そのものが危うくなりかねない。事細かく指示すれば業務が遅延する。遅々とした事務処理に振りまわされた消費者には、企業同士のギブアンドテイクなど知ったことではない。腹を立てれば次はない。

それでも『クライアント』はひたすら酷使し、派遣会社や代行会社は指示したことしかしない。企業にとっては、労働者も顧客も、利益を得るための『モノ』でしかない。互いに業績を高めあえるのになぜやらないのだろうか、これで企業が続くのだろうかと、何度首を捻ったことだろう。実にもったいない。

知る限りでは、この『ギブアンドテイクの中身を軽視しない企業』は生き残り、言い方が悪いが、『甘い汁だけ吸おうとした企業』は残っていないように思う。長期に生き残るのがほんの一部の企業だというのは、いつの時代も変わらない。

だから、最初から長期の展開を望まない起業もある。使い捨てにされる労働者にはたまらない話でも、企業家にとっては一つの方法にすぎない。消えた企業にはそういう企業もある。一つの需要はいつまでも続かないことのほうが多いが、それを好み、上手く立ち回る企業家もいるということだろう。

企業は利益を追求し、利益を見越して事業を展開する。そして、企業が小規模なほど利益は少なく危険度が高い。それは一時期の展開だけを望む起業の充分な理由になる。次の事業のプール、資本の調達にも利用されたりする。しかし、企業が事業をたたむ場合、社員を連れてはいかない。事業が終わるときが失業するときになる。その姿勢を公にする企業などない。

不安ならば、何をさておいても節約と預金の砦を築いておかないと、いつ路頭に迷うかわからない。失業保険は、一部の強欲な利用者のために、目を向けるごとに締めつけが厳しくなっている。ただでさえ、収入格差が広がりつつある労働者受難の時代。ここぞの時に力を発揮できるものでありたい。今、先見の明が一番必要なのは庶民であり、労働者かもしれない。